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GT-R専用エンジンVR38DETTのスペックやRB26DETTとの違いに迫る!

GT-R専用エンジンVR38DETTの画像




国内最速ともいわれている、R35型日産GT-R。

2007年に今までついていた“スカイライン”の冠を外してデビューしたこの車は、ドイツにあるサーキット“ニュルブルクリンク”で当時の市販車最速のタイムをたたき出しました。

VR38DETTが搭載されているR35GT-Rのリア画像

そんなGT-Rに搭載されているエンジンが、専用設計されたVR38DETT

市販車最速の心臓部に搭載されているこのVR38DETTは、とてつもないエンジンなのです。

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そこでこの記事の前半は、このモンスターエンジンともいえるVR38DETTの全容に迫り、名車ともいわれたR32~R34型GT-Rに搭載されているRB26DETTとの違いについてご紹介していきます。

さらにVR38DETTにまつわるエピソード等もご紹介。

そして後半では、このGT-R専用エンジンが搭載されたGT-Rではない、特別なマシンについてご紹介していきます。

多少長めの記事ですが、GT-RやVR38DETTエンジンについて詳しく知りたい方にはぜひ読んで頂きたい記事になっておりますので、ご一読くださいね。

では参ります。




VR38DETTの概要 |特徴や馬力は?

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まずはじめに、VR38DETTはどのようなエンジンなのか、という点に注目していきましょう。

VR38DETTの概要

最初にVR38DETTについて触れていきます。

日産がGT-Rを復活させるにあたり「GT-R専用のエンジン」として開発したエンジンが、このVR38DETT。

日産のV型エンジンといえば、初代シーマに搭載されたVGエンジンやV36型スカイラインやZ34型フェアレディZに搭載されているVQエンジンが有名です。

このエンジンの名称の付け方には、
VE→VG→VH→VK→VQ
といったように開発された順(アルファベット順)となっています。

VRエンジンは、VQエンジンの後継エンジンとして開発され、VR38DETTは「R35型のGT-R専用」として開発されました。

VR38の数字部分は日産のルールとして排気量3800㏄からとられています。

この後半部分の「DETT」にももちろん意味があります。

「D」はDOHC、「E」は日産の共通ルールでエンジンに付けられている名称、「T」はターボ装着を示しています。

ですので、VR38DETTはターボが2基搭載されたツインターボエンジンであるということがわかりますね。

VR38DETTは組み立て自体が特別扱い

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通常、自動車のエンジンは機械によって組み立てられています。

ですがVR38DETTは機械による流れ作業ではありません。

埃ひとつ立たない、徹底的に管理されたクリーンルームで1基のエンジンを1人の「匠」と呼ばれる専門スタッフが組み立てを担当する「手組み」となっています。

これだけでもVR38DETTが特別であるということがわかりますね。

また市販車にしては珍しいことですが、エンジンの品質検査が製造されたエンジン全てに行われます。

もしこの検査に不合格となったエンジンは、出荷されることなく組み立て直しになるのです。

このように熟練した職人によって組み上げられたVR38DETTは、搭載した完成車両(GT-R)と共に慣らし運転(40km~150km)が行われ、問題がなければ出荷される徹底ぶり。

市販車最速のエンジンはこのようにして作られているんですね。

ちなみに組み立ては神奈川県横浜市にある横浜工場で行われています。

VR38DETTのスペック

それでは、VR38DETTのエンジンスペックを見てみましょう。

こちらでご紹介するスペックは、R35型のGT-Rがデビューした時に搭載された際のスペックになります。(現行のスペックは後述していますので、ご安心ください)

エンジンのタイプ V型6気筒 DOHC 24バルブ ツインターボ
排気量 3,799cc
最高出力 353kW (480PS) /6,400rpm 2007年12月~モデル
最大トルク 588N·m (60.0kgf·m) /3,200-5,200rpm
参照元 NISSAN GT-R主要装備一覧

こちらが簡単なスペックです。

市販車にもかかわらず480馬力を叩き出すVR38DETTのポテンシャルの高さがうかがえます。

R35型のGT-Rがデビューした際に「こんなパワーのあるエンジンが必要あるのか?」と言われたほどです。

2002年で排ガス規制によって姿を消したスカイラインGT-R。

この復活を成し遂げたということもあるので、このスペックが妥当とも言えますね。




年次改良で常に進化

通常、市販車は3年から~6年のスパンでマイナーチェンジやフルモデルチェンジがされることが慣例でした。

VR38DETTが搭載されたR35型GT-Rはこれの例外で「イヤーモデル」という形式がとられています。

イヤーモデルとは

その名の通り1年に1回改良されて発売されるモデルのこと。

R35型GT-Rはデビューしてから毎年秋ごろに年次改良されています。

外見や走行性能はもちろんですが、搭載されているVR38DETTも毎年ではありませんが進化しています。

どのような部分が進化しているのかというと、エンジンにとって一番大切な部分である「馬力とトルクの向上」です。

各改良年ごとのエンジン性能は以下の通りになります。

2007年12月-2008年12月 最高出力:353kW (480PS) /6,400rpm
最大トルク:588N·m (60.0kgf·m) /3,200-5,200rpm
2008年12月- 最高出力:357kW (485PS) /6,400rpm
最大トルク:588N·m (60.0kgf·m) /3,200-5,200rpm
2011年 最高出力:389kW (530PS) /6,400rpm
最大トルク:612N・m (62.5kgf·m) /3,200-6,000rpm
2012年 最高出力:405kW (550PS) /6,400rpm
最大トルク:632N・m (64.5kgf·m) /3,200-5,800rpm
2016年 最高出力:419kW(570ps)/6800rpm
最大トルク:633N・m(64.6kgm)/3,300-5800rpm
NISMOモデル 最高出力:441kW (600PS) /6,800rpm
最大トルク652N·m (66.5kgf·m) /3,600-5,600rpm

驚きなのが、デビュー時よりも90馬力も向上するだけでなく最大トルクも4.6kgアップしている点です。

これだけ向上すると、サーキットでのタイムも飛躍的に向上していることでしょう。

GT-Rに搭載されているVR38DETT | RB26DETTとの違いは?

↓こちらは動画です。音量注意!

現行のGT-RはVR38DETTを搭載しているR35型ですが、

GT-Rといえばレースにおける伝説を残した名機RB26DETTを搭載したR32~R34型だ、という人もいると思います。

そこでここではVR38DETTとRB26DETTの違いなどに触れていきますね。

まず簡単にスペックの違いをご紹介すると次のようになります。

エンジン型式 RB26DETT VR38DETT
排気量 2,600cc 3,800cc
形式 直列6気筒 V型6気筒
最大出力 206kW (280PS)/6,800rpm
【当時の馬力規制により】
419kW(570ps)/6800rpm
最大トルク 392N·m (40.0kg·m)/4,400rpm 652N·m (66.5kgf·m) /3,600-5,600rpm
重量 255kg 215kg

ではさらにVR38DETTとRB26DETTの違いについて迫っていきましょう。

VR38DETTはGT-Rのために作られたエンジン

前の項目でも解説しましたが、VR38DETTはR35型GT-Rのために開発されたエンジンです。

VR38DETTが搭載されているR35GT-Rの画像

もともと、R35型GT-Rを開発するにあたり、エンジン仕様は最後の最後に決定されました。

通常、新型車を開発する際にはエンジンの性能が決まってから開発が進められます。

ですが、R35型GT-Rは運動性能が最重視されていました。

そこで最初はリヤタイヤに必要なグリップ力を決めることからスタート。

その中で世界初となる「独立型トランスアクスル4WD」機構を採用することが決められました。

独立型トランスアクスル4WD機構とは

クラッチ・トランスミッション・トランスファーをリアファイナルドライブと一体化させた機構のことです

そののち前後の重量バランスなどが決まり、最後にエンジンの仕様が決定。

高い運動性能を実現するには、重心位置をフロントの車軸よりも後方に置くフロントミッドシップレイアウトを採用する必要があります。

そのため、RB26に採用されていた直6型では縦置きした場合に長すぎてレイアウトが難しかったことから、全長が短いV6型という形式のエンジンが採用されます。

2002年に販売終了となった名車スカイラインGT-Rの後継車種という位置づけになるためにはエンジンの妥協はできません。(実際はGT-Rの名前だけを冠した全く異なる車ですが)

実際はスカイラインという名前を捨て、全く新しい車としてスタートすることになるので、今まで搭載されていたRB26DETTは搭載しないという選択がされました。

一方で法律上の問題もありV6型エンジンが採用されます。

具体的には、RB26DETTでは現在の法規制に引っかかってしまうため搭載すると販売不可になってしまうという背景があったのです。

RB26DETTの欠点を克服

名機と呼ばれたRB26DETTは、過酷なチューニングにも耐えられる「非常に頑丈なエンジン」ということでも有名です。

しかしハコスカGT-Rにも採用されていた、旧世代のL型エンジンと同様の鋳鉄ブロックを使ったRB26DETTは、頑丈だけど重たいことが弱点でした。

さらにできる限り低く、なおかつ後方の位置に搭載しても、直列というレイアウトだったためにエンジン自体の全長が長いという欠点も持ちあわせています。

このRB26DETTでは重たいエンジンゆえ、車の重量配分やコーナリング時の最適化が難しかったため、どれだけパワーを出してもバランス取りが難しい「頭でっかち」な状態になってしまうのです。

そこでR35型GT-Rは伝統の直列エンジンを捨て、全長も短くすることができる上に低重心を実現できるV型エンジンを搭載することになりました。

重量面で比較をするとRB26DETTが255kg、VR38DETTが215kgということで、エンジンだけで40kgも軽くなりました。

小柄な女性1人分の重量が軽減できるということは、車にとっては大きな違いです。

つまりVR38DETTはまさに「最強のエンジン」と言えるでしょう。




VR38DETTが搭載された幻の“ジューク R”!その全貌とは?

「VR38DETTはGT-R専用エンジンだ」と話をしましたが、

実はGT-R以外の日産車に搭載されて市販されたことがあります。

その車とは日産のジュークをベースに作られた“ジュークR”という車。

そこでここからはジュークRがどのような車なのかについて迫っていきます。




ジュークにGT-Rをまるまる移植したモンスターマシン

↓こちらは動画です。音量注意!

ジュークRは、見た目はまさに個性的なルックスのジュークです。

ですが、エンジンルームにはVR38DETTが窮屈ながらも収められ、トランスミッションやマフラー、サスペンションやブレーキなどもそっくりそのまま移植されています。

驚くことに、メーター類などのインテリアパーツも余すことなく移植。

見た目はジュークそのものですが中身はR35型GT-Rという、世にも奇妙な車です。

簡単に説明するのであれば、ジュークRはR35型GT-Rのシャシーを短くし、そこにジュークのボディを被せたものです。

ですがボディサイズはGT-Rと大きく異なりますので、20インチホイールを収めるためにオーバーフェンダーを装着するなどの工夫がなされています。

このジュークRは2011年にスペインのイベントで「世界最速のクロスオーバー」として初公開されました。

2012年にはワンオフモデルとして実際に販売されましたが、残念ながら日本国内では発売されていませんので、その姿を国内で拝むことはできませんね。

すべてがワンオフ!その車両価格とは?

コンパクトSUVのジュークに、VR38DETTをはじめとしたR35型GT-Rの部品を移植したジュークR。

ただ単にVR38DETT等を載せ替えできるのであれば簡単ですが、実際はそんなに簡単ではありません。

エンジンルームのサイズも違えば、ボディのフレームの構造も違います。

500馬力ものハイパワーなエンジンを搭載するわけですから、もちろんそのパワーを受け止められるようにボディの補強も行わなければなりません。

大量生産される大衆車とは違い、ジュークRの部品は車に合わせて”手作業”で作成されたワンオフ(特注)のパーツばかり。

なので1台の車を作るのに相当な手間とコストがかかります。

ジュークRはその珍しさや生産に時間もかかることから、世界で”たった4台”しか販売されていません。

しかも驚きなのがその車両価格。

なんとびっくり6500万円!

GT-Rの標準グレードが5台以上変えてしまう値段ですね・・・。

そんなジュークRを買った1人はアラブの石油王との噂もありますので、まさに趣味の車ということですね。

VR38DETTのチューニング|他車種への移植も!

VR38DETTが搭載されているR35GT-Rの画像

最近では、VR38DETTをチューニングするショップやユーザーも増えてきました。

もともと速いエンジンをどのようにチューニングしているのか、という点にも注目ですね。

日産直系ワークスが発売! GT-R NISMO とは

日産メーカー直系のチューニングといえば、NISMO(ニスモ)。

VR38DETTが搭載されているR35GT-Rの画像

そのNISMOがSuper GT や FIA GT3 で培ったノウハウをふんだんにつぎ込んで開発した車が GT-R NISMO です。

見た目はレーシングカーさながらのエアロパーツをあしらい、見た通り「速そう」と思えます。

もちろんこのエアロは飾りではなく、見た目以上に計算しつくされた空力性能を発揮してくれます。

さらに搭載されているVR38DETTにも手が加えられており、

レース用車両「NISSAN GT-R NISMO GT3」にも使用されている高効率大容量の専用ターボチャージャーを搭載。

最高出力は600PSを発生しています。

さらに気筒別に最適な点火時期をコントロールする気筒別点火時期制御や専用燃料ポンプ、最適な燃料噴射量をコントロールするインジェクター駆動回路も採用。

排気性能・運動性能を損なうことなく出力を向上させています。

メーカー直系ということで、エンジン出力や足回り、空力性能すべてが向上された、まさに”最強のGT-R”といえますね。

優れた耐久性!1000馬力オーバーの競技用エンジンも!

VR38DETTの画像

VR38DETTはRB26DETTと同様に耐久性に優れています。

実は開発当初より、時速300kmで巡行することを目的として開発されているのです。

これに加えノーマルでも500馬力ものハイパワーを叩き出しているので、壊れないようにする必要性もありました。

ノーマル状態の耐久性はRB26DETTを超えるとも言われています。

デビューから10年以上経った今ではノウハウも蓄積されてきているため、VR38DETTをパワーアップするチューナーが増えてきていますね。

国内最高峰のドリフト競技会のD1グランプリではハイパワーにチューニングされたVR38DETTを搭載した車がエントリーしています。

もともと3800ccの排気量のエンジンを4100ccまで排気量をアップさせ、大型のタービンを到着することで1000馬力を叩き出すとのことです。

ターボのブーストを挙げると1200馬力まで上がるとのことで、ロケットのような加速が味わえそうですね。

トヨタのあの車に搭載されてしまう!

VR38DETTは日産のエンジン、ということはこの記事を読んだ方は当然ながらわかることですよね。

実は、このVR38DETTがトヨタのハイエースに搭載されたという事実があるんです。

そのハイエースが下の画像になります。

このハイエースが公の場に現れたのが2018年1月に開催された東京オートサロン。

迫力のあるマッドブラックのボディにオーバーフェンダー、255幅のワイドタイヤを装着したハイエースの心臓部には、VR38DETTが搭載されています。

ハイエースといえば、エンジンの位置が運転席と助手席の下にありますが、この位置にVR38DETTが入っています。

さらにフロントバンパーに埋め込むように大型インタークーラーが配置されマフラーは左右4本出し。

インテリアにもこだわりがあり、RECAROのバケットシートが6脚装備されています。

さらに驚きなのがオートスライドドアも装備されているため、走行性能以外にも快適性まで求められて作られている点です。

この手のチューニングカーはナンバーの取得がされていない、いわゆる「展示会仕様」が大半。

ですがこのハイエースは公認車検を取得済みという合法仕様なのです。

全てがワンオフなので相当な費用がかかっているそうですが、トヨタと日産の豪華コラボレーションを実現してみるのも面白いですね!

まとめ

VR38DETTの画像

日産のフラッグシップスポーツカーのGT-Rに搭載されているVR38DETTを一言で表すなら「21世紀最強のエンジン」といってもいいでしょう。

1基1基のエンジンが職人の手で組まれ、徹底した品質管理がされていることから、日産の本気度が伺えます。

1000馬力を超えるチューニングがされたりもするので、耐久性も抜群。

これからも年次改良が繰り返されていくので、さらなる進化が期待されますね。